「毎日、夜勤や残業でヘトヘト…」 「もっと一人ひとりの患者さんとゆっくり向き合いたい」 「このまま定年まで病院で働き続けるのかな?」
病棟で忙しく働く中で、ふとそんな不安や疑問を感じることはありませんか?
実は今、病院を飛び出して「起業」という新しい働き方を選ぶ看護師さんが増えています。「経営なんて難しそう」と思うかもしれませんが、訪問看護ステーションのような本格的なものから、スマホ1つで始められる相談業まで、その形はとてもカラフルです。
この記事では、看護師資格を活かした起業のアイデアや、失敗しないための進め方を分かりやすく解説します。
この記事の音声はこちら↓
1. なぜ今、看護師の「起業」が選択肢になっているのか

「看護師免許を取ったら、病院に就職して定年まで勤め上げる」 かつてはそれが当たり前のコースでした。しかし今、その常識が大きく崩れ始めています。
なぜ、安定した病院勤務を飛び出し、あえて「起業」という道を選ぶ看護師が増えているのでしょうか。そこには、日本社会が抱える大きな課題と、働く看護師自身の意識の変化が深く関わっています。
病棟だけがキャリアじゃない時代に
まず知っておきたいのは、「看護師を必要としている場所」が、病院の外へ猛スピードで広がっているという事実です。
最大の要因は、皆さんご存知の「少子高齢化」です。 お年寄りが増え続ける一方で、病院のベッド数には限界があります。そのため国は今、「病院完結型」の医療から、住み慣れた地域で暮らす「地域完結型」の医療へと大きく舵を切っています。
これにより、以下のような場所での看護ニーズが急増しています。
- 在宅医療の現場: 訪問看護ステーション、訪問入浴、個人の家への出張ケア
- 介護・福祉施設: デイサービス、老人ホーム、障がい者支援施設
- 一般企業・オンライン: 企業の健康経営サポート、オンラインでの医療相談
つまり、「患者さんが病院に来るのを待つ」時代から、「看護師が生活の場へ出向いてケアをする」時代へとシフトしているのです。この社会背景が、組織に属さずに自分のスキルを提供する「起業」という選択を後押ししています。
看護師が起業を考え始める3つのきっかけ

では、実際に現場で働く看護師たちは、どんなタイミングで「起業」を意識し始めるのでしょうか。多くの先輩ナースが口にする理由は、大きく分けて3つあります。
① 「働き方」と「体力」の限界
「夜勤・日勤・夜勤のシフトがキツイ」「腰痛が慢性化して、このまま定年まで働く自信がない」 20代、30代と年齢を重ね、結婚や子育て、親の介護などのライフイベントに直面したとき、不規則な病院勤務と生活の両立に悩み、働き方の自由度が高い起業を考えるケースです。
② 「自分のやりたい看護」ができないジレンマ
「忙しすぎて患者さんの話をゆっくり聞けない」「本当はもっと家に帰る支援をしたいのに、業務に追われて退院調整が進まない」 組織の中では、どうしても効率やルールが優先されます。「もっと一人ひとりに寄り添いたい」という熱い想いを持つ看護師ほど、理想と現実のギャップに苦しみ、「自分で理想の場所を作ろう」と決意するのです。
③ 収入やキャリアへの不安
「師長などの管理職にならないと給料が上がらない」「病院という狭い世界だけで人生を終えていいのか」 専門職としてスキルを磨いても、病院の給与テーブルには上限があります。自分の頑張りがダイレクトに評価・報酬につながる世界に挑戦したい、というポジティブな動機も増えています。
起業 = いきなり「会社」をつくることではない
「起業」と聞くと、多くの人が「借金をして事務所を借りて、社長になって社員を雇う」という大掛かりなものをイメージしがちです。これが心理的なハードルになっています。
しかし、今の時代の起業はもっと柔軟です。
- まずは「個人事業主」から: 法人(会社)を作らず、個人として開業届を出すだけでスタートできます。
- 「副業」からのスモールスタート: 病院で働きながら、休日にライター活動をしたり、イベントナースをしたりするのも立派な「プチ起業」です。
最初からすべてを捨てる必要はありません。まずは副業や週末起業で小さく始めて、手応えを感じたら徐々に本格的な事業へと育てていく。そんな「リスクを抑えた起業」ができるのも、国家資格という強力なバックボーンを持つ看護師ならではの強みなのです。
2. 看護師に向いている起業アイデア|王道からオンラインまで

「看護師の資格を使って起業する」と一言で言っても、その方法は実に多彩です。 ガッツリと事業所を構える王道スタイルから、パソコン1台で始めるスマートなスタイルまで。ここでは、看護師の強みを活かせる代表的な5つのジャンルを紹介します。
① 訪問看護ステーション|看護師起業の王道モデル

看護師起業の中で最もポピュラーかつ、社会的な需要が高いのが「訪問看護」です。
どんなサービス? 利用者さんの自宅を訪問し、主治医の指示書に基づいて医療処置(点滴、褥瘡ケア、服薬管理など)や療養上の世話を行います。「家で最期を迎えたい」「病気があっても自宅で暮らしたい」という願いを叶える、地域医療の要(かなめ)です。
ここがメリット
- 看護師が主役になれる: 医師の指示下ではありますが、日々のケアプランや判断は看護師の裁量が大きく、専門性を最大限に発揮できます。
- 収益が安定しやすい: 医療保険や介護保険といった公的な制度を利用するため、一度契約が決まれば毎月継続的な収入が見込め、未払いリスクも低いです。
起業のハードル(知っておくべきこと) この事業は「ひとり」では始められません。国が定めた厳しい基準をクリアする必要があります。
- 人員基準: 「看護職員が常勤換算で2.5人以上」必要です。つまり、自分以外に最低でも1.5〜2人以上の仲間(スタッフ)を集めなければ開業できません。
- 法人格: 個人事業主では指定を受けられないため、株式会社や合同会社などの「法人(会社)」を設立する必要があります。
- 資金: 事務所の契約や採用コストを含め、初期費用として500〜1,000万円程度を見込んでおくのが一般的です。
② デイサービス・通所系サービス
お年寄りが日帰りで通う施設ですが、ここに「看護師」がいることで大きな差別化が生まれます。
医療職としての強み 一般的なデイサービスでは、医療依存度の高い利用者(インスリン注射、ストマ管理、酸素吸入などが必要な方)の受け入れが難しいケースが多々あります。 しかし、看護師が経営・常駐するデイサービスなら、こうした「他では断られがちな方」も安心して受け入れられます。これが強力な競合優位性(ビジネス上の武器)になります。
運営のイメージ
- 看護特化型デイサービス: リハビリよりも「療養・ケア」に重点を置いた施設。
- 他職種との連携: 理学療法士(PT)と組んで「リハビリ特化型」にしたり、介護福祉士と組んで入浴サービスを強化したりと、チームで運営するケースが多いです。
③ 医療的ケア児・障がい児・家族支援
NICU(新生児集中治療室)などでの経験がある看護師に、特に注目されている分野です。
現場から見える切実なニーズ 医療技術の進歩により命を救われた子どもたちの中には、退院後も人工呼吸器や痰の吸引、経管栄養などの「医療的ケア」が日常的に必要な子がたくさんいます。 しかし、地域の保育園や学校では医療ケアに対応できず、預かりを断られるケースが少なくありません。その結果、お母さんが24時間つきっきりになり、仕事も辞めざるを得ない…という「家族の孤立」が社会問題になっています。
看護師だからできること
- 医療的ケア児対応の児童発達支援・放課後等デイサービス: 医療ケアが必要な子どもを預かり、遊びやリハビリを提供します。
- レスパイトケア(休息): ご家族が一時的に休息をとれるよう、自宅で留守番ケアを行う自費サービスなど。 「子どもたちの成長を長く見守れる」「ご家族の人生も支えられる」という、非常に大きなやりがいがある仕事です。
④ 自宅・オンラインでできるプチ起業・副業アイデア

「いきなり店舗を構えるのは怖い」「まずは資金をかけずに始めたい」という方には、オンラインやフリーランス型の起業がおすすめです。
主なアイデア
- オンライン健康相談・カウンセリング: ZoomやLINEなどを使い、育児相談やメンタルヘルス相談を行います。
- ⚠️注意点: 医師法により、看護師のみで「診断」や「治療」はできません。「受診勧奨(病院へ行くよう勧める)」や「生活上のアドバイス」という立ち位置を守る必要があります。
- セミナー・研修講師: 企業向けに「生活習慣病予防セミナー」を行ったり、介護施設で「急変時対応」の研修を行ったりします。教えることが好きな人に向いています。
- 医療系Webライター・監修: 正しい医療知識を持つライターは貴重です。記事執筆や、他人が書いた記事の医学的チェック(監修)で報酬を得ます。
- SNS・ブログ運営: 自分の知識や経験を発信し、ファンを集め、そこから相談サービスやおすすめ商品の紹介(アフィリエイト)につなげます。
- フリーランスナース: イベント会場の救護所待機(イベントナース)や、修学旅行の付き添い(ツアーナース)、健診センターへの出張など、単発の仕事を請け負います。
⑤ 看護スキルを軸にした周辺ビジネス
直接的な「ケア」以外でも、看護師の視点はビジネスになります。
- 健康コンサルタント: 老人ホームの運営アドバイザーや、企業の「健康経営」をサポートするコンサルタントとして契約します。
- 医療・介護系スタートアップ: 「看護師のマッチングアプリを作りたい」「訪問看護の業務効率化ツールを開発したい」など、IT企業を立ち上げる、あるいは創業メンバーとして参画するケースです。
- 教育・キャリア支援: 看護学生向けの国家試験対策塾や、若手看護師向けのキャリアコーチングなど、後輩を育てるビジネスです。
3. 看護師が起業するメリット・デメリット

「起業して自由になりたい!」という憧れだけで突っ走るのは危険です。会社員(雇用される側)と経営者(雇用する側)では、見える景色がまったく違います。 良い面と大変な面、両方を天秤にかけてみましょう。
メリット:看護師だからこその強み
① 「看護師」の看板が最強の信用になる 普通の人がゼロから起業する場合、「私は怪しい者ではありません」と証明するのに大変な労力を使います。 しかし、看護師には国家資格という強力なライセンスがあります。「看護師さんがやっているサービスなら安心」と、最初から高い信頼を得た状態でスタートできるのは、ビジネスにおいて圧倒的なアドバンテージです。
② 社会の「困った」を解決するやりがい 超高齢社会の日本において、医療・介護はもっとも必要とされている分野です。「世の中の役に立っている」という実感(貢献感)をダイレクトに感じられます。流行り廃りのあるビジネスと違い、将来的にも仕事がなくなる心配が少ないのも強みです。
③ 働き方も仲間も、自分で決められる 「嫌な上司と働かなくていい」「満員電車に乗らなくていい」「子どもの行事に合わせて休める」。 誰と働くか、どこで働くか、いつ休むか。すべての決定権が自分にあります。自分の価値観に合う仲間を集めて、理想のチームを作ることも可能です。
④ 収入の上限がない 病院勤務では、給料表(号俸)で給与が決まっており、どれだけ頑張っても限界があります。 起業すれば、頑張った分だけ売上が上がり、それが自分の収入に直結します。事業が成功すれば、病院勤務時代では考えられない収入を得ることも夢ではありません。
デメリット:知らないと危険なポイント
① 守るべきルールが山ほどある 人の命や健康に関わる仕事なので、法律の規制はとても厳しいです。 「知らなかった」では済まされません。医療法、介護保険法、広告規制(医療広告ガイドライン)など、独特のルールを勉強し、守り続ける必要があります。
② 経営スキルという「新しい壁」 看護のプロであっても、経営は素人からのスタートです。
- 資金繰り: 「来月の家賃やスタッフの給料、払えるかな…」というお金のプレッシャー。
- マネジメント: スタッフがすぐに辞めてしまったり、人間関係のトラブルが起きたり。 こうした問題に、すべて自分で対処しなければなりません。
③ 「看護」と「経営」のジレンマ これが最も多くの看護師社長がぶつかる壁です。 「現場が好きだから」と自分自身が訪問看護やケアに走り回っていると、経営のこと(営業、採用、事務処理)を考える時間がなくなります。 「自分が現場に出ないと回らないけど、出ていると会社が成長しない」というジレンマに陥りやすいのです。
向き・不向きのチェックポイント
「私に社長なんてできるかな…」と不安な方は、このリストで自己診断してみましょう。
✅ 起業に向いているタイプ
- 変化を楽しめる人: 毎日同じルーチンワークより、予期せぬトラブルも含めて「変化」を楽しめる。
- 決断できる人: 正解がない中で「こっちに進もう!」と自分で決めて、その結果に責任を持てる。
- 勉強し続けられる人: 医療知識だけでなく、マーケティングや会計など新しいことを学ぶのが苦にならない。
- 「なんとかする」バイタリティがある人: 失敗しても「じゃあ次はどうしよう?」とすぐに切り替えられる。
❌ 今はまだ慎重になったほうがいいタイプ
- 安定第一の人: 毎月決まった日に給料が振り込まれないと、不安で眠れなくなってしまう。
- 一人で抱え込む人: 人に頼るのが苦手で、全部自分でやらないと気が済まない(パンクしてしまいます)。
- 事務作業が大嫌いな人: 起業初期は、地味な書類作成や手続きの山です。
💡 ポイント:100点満点じゃなくてOK! すべての項目に当てはまらなくても大丈夫です。経営に必要なスキル(お金の計算や法律知識)は、税理士さんや社労士さんなど専門家の力を借りればカバーできます。
最低限必要なのは、「自分の理想を実現したい!」という強い想いと、「わからないことは素直に人に聞く」という姿勢です。これさえあれば、あとは走りながら身につけていけます。
4. 失敗しないための7ステップ|看護師起業のロードマップ

「起業したい!」と思っても、いきなり辞表を出してはいけません。 起業は準備が8割です。地図を持たずに登山をするような無謀な挑戦を避けるために、成功確率を高める7つのステップを順に追っていきましょう。
ステップ1:理想の働き方・人生プランを言語化する
まずはスマホを置いて、ノートとペンを用意してください。そして、自分の頭の中にある「モヤモヤ」や「理想」をすべて書き出してみましょう。
- お金のこと: 「年収はいくら欲しい?」「最低いくらあれば生活できる?」
- 時間のこと: 「週末は絶対に休みたい?」「夜勤はナシがいい?」
- 看護のこと: 「どんなケアをしている時が一番楽しい?」「誰を笑顔にしたい?」
【おすすめワーク】 ノートの真ん中に線を引いて、左側に「今の職場の嫌なところ(不満)」、右側に「それがどうなったら最高か(理想)」を書いてみてください。その「右側の内容」が、あなたの起業の目的(理念)になります。
ステップ2:ビジネスアイデアとターゲットを絞る
「なんでもやります」は「なにもできない」のと同じです。あなたのサービスを届けたい相手(ターゲット)を一人に絞り込みましょう。
「誰の」×「どんな悩みを解決するか」を1文で作ってみてください。
- 悪い例: 「みんなのための健康相談」
- (誰に向けてかぼやけていて、刺さらない)
- 良い例: 「初めての育児で不安な新米ママのための、LINEでできる夜間授乳相談」
- (対象と解決策がハッキリしている!)
ステップ3:小さく市場調査をする
自分のアイデアが「独りよがり」になっていないか確認する作業です。
- Google検索: 近くに似たようなサービスはあるか? ライバルはいくらで提供しているか?
- リアルな声を聞く: 「こんなサービスがあったら使いたい?」と、ターゲットに近い人(ママ友、同僚、担当している患者さんの家族など)に聞いてみましょう。
「絶対に需要があるはず!」という思い込みは危険です。厳しい意見ほど、成功へのヒントになります。
ステップ4:事業計画とお金のシミュレーション

ここは少し現実的な数字の話です。「どんぶり勘定」は失敗の元。ざっくりでいいので計算してみましょう。
- 入るお金(売上): 客単価 × 人数
- 出るお金(経費): 家賃、移動費、システム利用料、広告費など
- 残るお金(利益): 売上 − 経費
⚠️ 最も重要なポイント 起業してすぐに売上が立つとは限りません。半年間、収入がゼロでも生活していけるだけの「生活防衛資金」と、事業を回す「運転資金」を確保できるか考えましょう。
ステップ5:事業形態の選択と手続きイメージ
自分のお店の形(法的ルール)を決めます。
- 個人事業主: 開業届を出すだけでスタート。手続きが簡単で、副業や小規模ビジネス向き。
- 法人(株式会社・合同会社など): 設立に費用と手間がかかるが、信用力が高く、節税の幅も広い。
【重要】訪問看護ステーションの場合 訪問看護やデイサービスなどの介護・医療保険事業を行う場合は、必ず「法人」である必要があります。また、都道府県からの「指定(許可)」をもらわないと営業できません。ここを間違えるとスタートラインにも立てないので注意が必要です。
ステップ6:集客・営業の導線設計

「良いサービスを作れば、勝手にお客さんが来る」…残念ながら、それは幻想です。「ここに私がいますよ!」と知らせる活動(集客)が必要です。
- 訪問看護・介護系: 地域のケアマネジャー、病院の連携室、医師への挨拶回りが命です。チラシを持って泥臭く足を運びます。
- オンライン・講師系: ホームページ、SNS(InstagramやX)、ブログでの発信がメイン。
まずは「最初の3人の利用者さんを、どうやって見つけるか?」を具体的にシミュレーションしてみましょう。ここがクリアできれば、事業は動き出します。
ステップ7:今すぐできる“スモールスタート”
いきなり退職して「背水の陣」を敷くのはリスクが高すぎます。おすすめは「小さく試す」ことです。
- 休日にボランティアでイベントナースをしてみる。
- SNSで情報発信を始めて、反応を見てみる。
- ココナラなどのスキル販売サイトで、相談サービスを出品してみる。
今の給料をもらいながら、副業としてテストマーケティングを行いましょう。そこで「これはいける!」という手応えと、最初のお客さんを掴んでから独立するのが、最も賢い(失敗しない)ルートです。
6. 「看護師×起業」でよくある不安とQ&A

新しいことに挑戦するとき、不安になるのは当たり前です。むしろ、不安があるからこそ慎重に準備ができます。 ここでは、多くの看護師さんが最初につまずく4つの疑問に、本音でお答えします。
Q1:ビジネスの知識がゼロでも、本当に大丈夫?
A. 最初から完璧じゃなくて大丈夫!走りながら学びましょう。
今の時点で「貸借対照表が読める」「マーケティング用語がわかる」という看護師さんはほとんどいません。先輩たちも、最初はみんな「右も左もわからない状態」からスタートしています。
大切なのは、わからないことをそのままにせず、その都度調べる・学ぶ姿勢です。
- どうやって学ぶ?
- 本やYouTube: 起業の基礎知識は、初心者向けの本や動画で十分に学べます。
- 公的機関の無料相談: 「よろず支援拠点」や「商工会議所」など、国や自治体が用意している無料の相談窓口が実はたくさんあります。
- 先輩に聞く: すでに起業している看護師さんのセミナーやコミュニティに参加して、リアルな体験談を聞くのが一番の近道です。
Q2:お金が不安…どのくらい貯金があればいい?
A. 「どんな起業をするか」で桁が変わります。
起業に必要な資金は、大きく2つのパターンに分かれます。
- ガッツリ型(訪問看護ステーションなど)
- 事務所を借りたり、スタッフを雇ったりするため、初期費用で500〜1,000万円ほどかかる場合があります。これは自己資金+銀行からの融資(借入)でまかなうのが一般的です。
- スモール型(オンライン相談・ライターなど)
- パソコンとネット環境があれば始められるので、初期費用は数万円〜数十万円で済みます。お小遣いの範囲でスタート可能です。
💡 共通して必要なのは「生活防衛資金」 事業資金とは別に、「半年〜1年分の生活費」は貯金として確保しておきましょう。 起業直後は売上がゼロの月もあります。その時に家賃や食費の心配をしなくて済む状態を作っておくことが、精神安定剤になります。
Q3:起業して失敗したらどうなりますか?

A. 「借金があるかないか」でダメージが違います。
「失敗=人生の終わり」ではありません。失敗したときの影響は、負債(借金)の大きさで決まります。
- 大きな借入をして失敗した場合:
- 借金の返済が残ります。ただ、自己破産などの法的整理や、再就職して少しずつ返す道もあり、命まで取られることはありません。
- 借入なし(自己資金のみ)で失敗した場合:
- 貯金は減りますが、借金は残りません。「いい勉強代だった」と割り切って、また看護師として病院で働き直すことができます。
リスクを下げるコツ いきなり大金を借りるのではなく、まずは「副業」や「小さく始める(スモールスタート)」方法を選べば、もしうまくいかなくても傷は浅く済みます。これが一番賢いリスクヘッジです。
Q4:家族や職場にどう話せばいい?
A. 「辞めてから考える」はNG。「準備して見せる」のが正解です。
家族が反対するのは、あなたのことが心配だからです。「なんとなく起業したいから辞める」と言えば、当然止められます。
応援してもらうためのポイントは、「本気度」を行動で示すことです。
- 「今の仕事をつづけながら、起業のための貯金をこれだけ貯めた」
- 「週末を使って、事業計画書をここまで具体的に作った」
- 「もし半年で芽が出なければ、きっぱり諦めて再就職する」
このように、リスクへの対策や期限を設けた上で相談すれば、家族も「そこまで考えているなら…」と応援してくれるはずです。職場への報告も、準備が整い、退職の意思が固まってから行いましょう。
7. 今日からできる「小さな一歩」チェックリスト

「いつか起業したい」 そう思っているだけでは、1年後も今と同じ場所にいることになります。 まずはリスクゼロ、お金もかけずにできることから始めてみましょう。
Step 0:まずは情報収集と自己分析から
いきなり税務署に行く必要はありません。まずはスマホとノートでできる「脳内の準備」です。
- 先輩のリアルを知る
- 「看護師 起業 インタビュー」などで検索し、実際に起業した人の記事を読んでみる。
- Amazonや書店で「看護師の起業」「訪問看護の立ち上げ」に関する本を1冊買ってみる。
- 「自分」を知るワーク
- 自分の「得意な看護技術」や「好きな業務(患者さんと話すこと、後輩指導など)」を書き出す。
- 逆に「やりたくないこと(夜勤、通勤、人間関係など)」も書き出す。
30日でできるアクションプラン例
「何からやればいいかわからない」という人は、このスケジュールの通りに動いてみてください。
📅 1週目:アイデア出し・自己分析 ノートを1冊用意し、思いつくままに「やりたいこと」を書きなぐります。「カフェ併設のステーション」「美容ナースの経験を活かしたサロン」など、妄想でOKです!
📅 2週目:市場調査・先輩起業家の話を聞く 1週目で出たアイデアについて、似たようなサービスがないかネットで検索します。SNSで起業している看護師さんをフォローし、発信内容をチェックするのもこの時期です。
📅 3週目:小さなサービス案を作って周りに聞いてみる 「もし私がオンラインで育児相談をやるなら、いくらなら使う?」と、友人や同僚に“仮説”をぶつけてみます。率直な意見をもらいましょう。
📅 4週目:必要な学び・今後半年の行動計画を立てる 足りない知識(法律、お金、ITなど)が分かってきます。「来月はこのセミナーに行こう」「まずは半年で100万円貯めよう」と、次の具体的な目標を決めます。
8. まとめ|「完璧な準備」より「小さな一歩」から始めよう
最後に、この記事の重要ポイントを振り返ります。
- 看護師の活躍の場は広がっている: 病院だけでなく、地域やオンラインなど、あなたのスキルを求めている場所はたくさんあります。
- 起業の形は自由: いきなり会社を作らなくても、副業やスモールスタートから始められます。
- 「看護」と「経営」は別物: 法律やお金の知識は必要ですが、専門家の力を借りながら学び続ければ大丈夫です。
- 失敗はコントロールできる: 小さく始めれば、致命的な失敗にはなりません。
あなたの経験は、すでに最強の武器
「私にはビジネスなんて無理」 そう思う必要はありません。あなたはこれまで、命の現場で「観察」し、「アセスメント」し、瞬時に「判断」して行動してきました。 その「目の前の人の困りごとに気づき、解決する力」こそが、ビジネスの基本であり、最も重要なスキルです。
看護師としての経験は、起業においても最大の武器になります。 まずは、完璧な準備なんていりません。今日、このあとすぐにできる「小さな一歩」を踏み出してみてください。
👇 今すぐできるアクション!
- ノートを1冊用意して、「なぜ起業したいのか」を10分だけ書き出してみる
- 「いいな」と思う働き方をしている看護師さんをSNSでフォローしてみる
- 家族や信頼できる友人に「将来、こんなことをやってみたい」と話してみる
あなたのその一歩が、理想の未来へのスタートラインです。

⚠️ 必ずお読みください
本記事は2025年時点の情報や一般的な事例をもとに構成しています。医療・介護分野の法制度や基準は頻繁に改正されます。実際に起業・開業される際は、必ず最新の行政情報(厚生労働省や自治体の発表)をご確認の上、ご自身の責任において判断・行動してください。

コメント