自分ばかり責めないで、肩の力を抜いて…あなたは1人じゃない

「給料に納得してても辞めたい」公立病院で起きてる“本当のしんどさ”を言語化してみた

目次

Xで回ってきた「離職検討77%」を見て、まず思ったこと

先日、X(旧Twitter)やニュースで「公立・公的病院で働く医療従事者の77%が仕事を辞めたいと考えている」というデータが拡散されていました。これ、全日本自治団体労働組合(自治労)というところが、全国の公立病院などで働く組合員に向けて行ったWeb調査(2025年11月〜2026年1月実施)の結果です。

1万人規模の回答が集まったこの調査。あくまで「組合に加盟している人」向けのアンケートなので、全国の医療従事者全員の正確な割合(全体推計)というわけではありません。でも、現場で働く1万人以上がリアルな声を寄せたという意味で、現場の“空気感”を測るには十分すぎるほど重いデータです。これを見て、あなたはどう思いましたか?

公立・公的病院 医療従事者調査 77% 離職を検討 ※給与に「満足」している層でも51%

音声のみはこちら↓

数字が刺さったのは、“驚き”より“既視感”だった

「77%も辞めたいと思ってるの!?異常事態じゃん!」と世間はざわつきましたが、医療現場で働く人からすれば「まあ、そりゃそうだろうな」という既視感のほうが強かったのではないでしょうか。 日本看護協会のデータを見ると、実際に1年で辞めてしまう正規雇用看護職員の「離職率」はだいたい11%台を推移しています。つまり、77%の人が「辞めたい」と限界を感じながらも、実際に辞める決断を下すのは1割程度。残りの6割以上の人は、ギリギリの状態で踏みとどまって日本の医療を支えているのが現実です。

「辞めたい」って、退職届の話だけじゃないんだよね

アンケートの「辞めたい」という回答は、「常に」「しばしば」「たまに」を全部合わせた数字です。これって、「明日すぐに退職届を叩きつけてやる!」という過激なものばかりではありません。 夜勤明けの朝日を見ながら「もう無理かもな」とため息をつく瞬間。ナースコールが鳴り止まない中、走り書きで記録を残しているときの虚無感。そういう、日常のふとした瞬間に漏れ出る「辞めたい」の積み重ねが、この77%という数字の正体です。

「給料に満足でも辞めたい」って矛盾じゃない(むしろ自然)

このニュースでもう一つ注目されたのが、「自分の収入に満足している層でも、51%が辞めたいと答えている」という事実です。世間からは「お給料たくさんもらってるなら我慢しなよ」と言われがちですが、現場の感覚からすると、これはまったく矛盾していません。

お金は“痛み止め”にはなるけど、“骨折”は治らない

夜勤手当や残業代がつけば、たしかに口座に振り込まれる金額は増えます。でも、お金はあくまで「痛み止め」です。 慢性的な人手不足、命を預かるプレッシャー、休まらない心身。これらは現場が負っている「骨折」のようなもの。痛み止め(給料)を飲んで一時的に痛みを散らしても、骨折(根本的な労働環境)を治療しなければ、いつか必ず歩けなくなります。

評価されない・守られない・報われないが同時に来ると折れる

調査の上位理由にも「多忙」「責任の重さ」「人員不足」が並んでいました。給料がいくら良くても、「こんなに頑張っているのに誰も見てくれない」「理不尽なクレームから病院が守ってくれない」「患者さんのためになっている実感がない」という状態が続けば、人の心は簡単にポキッと折れてしまいます。賃金だけでは、人間のモチベーションは維持できないのです。

辞めたい気持ちが増幅する“日常の地味ストレス”ベスト7

医療現場のしんどさは、ドラマで起きるような大事件よりも、日々の「小さなすり減り」の連続です。高校生が読んでも「うわ、それはキツいな」と想像できるような、現場のリアルなストレスを言語化してみました。

①休憩が「取れたことになってる」問題

今回の調査でも、「休憩が取れない層ほど離職意向が高い」という結果がハッキリ出ています。記録上は「1時間休憩」となっていても、実際はおにぎりを5分で胃に流し込み、ナースコールが鳴れば飛び出すのが日常。休んでいないのに休んだことにされる理不尽さは、静かに心を削ります。

②人が足りないのに「回せてるよね?」圧

常にカツカツのシフト。「今日もなんとか終わった…」とボロボロになりながら業務を回していると、上の人からは「今の人数でも回せてるじゃない」と判断されてしまい、一向に人が増えない。この“頑張り損”のループは本当にしんどいです。

③リーダー業務だけ増えて、裁量は増えない

中堅になると、後輩の指導や病棟のリーダー業務など、やるべきことだけがドンドン降ってきます。でも、「じゃあこういうルールに変えましょう」と提案しても通らない。責任だけが重くなり、物事を決める権利(裁量)がない状態は、大きなストレス源です。

④インシデントが怖いのに、確認する時間がない

医療ミスの一歩手前である「インシデント」。絶対に起こしてはいけないと分かっているのに、業務がパンパンすぎてダブルチェックすら駆け足になる。この「いつか大きな事故を起こしてしまうんじゃないか」という恐怖と常に隣り合わせのヒリヒリ感は、寿命が縮む思いがします。

⑤やりがい搾取:優しい人ほど抱え込む

「患者さんのために」「私がやらないと他の人が困るから」。医療従事者には根が優しくて責任感が強い人が多いです。その優しさにつけ込むように、本来なら組織として解決すべき仕事のしわ寄せが、個人の自己犠牲に依存する形で成り立ってしまっています。

⑥家に帰っても“脳が夜勤”のまま

今回の調査から「夜勤」の項目が追加されましたが、やはり「夜勤回数が多いほど離職意向が上がる」という相関が出ました。人間の体は夜に起きるようにはできていません。夜勤明けでベッドに入っても、脳が興奮状態で眠れなかったり、アラームの幻聴が聞こえたり。プライベートな時間まで仕事に侵食されている感覚になります。

⑦「看護師なんだから」で雑に扱われる瞬間

「白衣の天使」という古いイメージのせいで、何を言っても許される、どんな感情をぶつけても受け止めてもらえると勘違いしている人がいます。専門職として働いているのに、単なるお世話係のように雑に扱われる瞬間が重なると、この仕事の意義を見失いそうになります。

カスハラの話、ちょっとだけさせて(現場だと“空気”になってる)

最近よく聞く「カスタマーハラスメント(カスハラ)」。店員さんへの暴言などが問題になっていますが、医療現場のカスハラはもっと深刻です。今回の調査でも、直近1年で「自分が受けた」人が27%、「職場にある」と答えた人が40%もいました。

患者さんの怒りと、理不尽は別物

病気への不安や、待ち時間の長さからイライラしてしまう患者さんの気持ちは分かります。病気が人を不機嫌にさせることも理解しています。でも、それと「医療従事者に暴言を吐く」「セクハラをする」「大声で威嚇する」のはまったくの別物です。不安だからといって、誰かを傷つけていい理由にはなりません。

謝る担当が固定されると、メンタルが削れる

クレームが起きたとき、なぜかいつも同じスタッフ(言い返せなさそうな若手や、温厚な中堅)が矢面に立たされ、理不尽に謝り続けるはめになる病棟があります。これを放置していると、そのスタッフのメンタルは確実に壊れます。

「守ってくれる仕組み」がある病棟は、離職が減る体感ある

最近では、厚労省が対策マニュアルを出したり、長野赤十字病院のように「暴言・暴力には警察を呼びます」とホームページで明確な基本方針(ペイシェントハラスメントに対する方針)を宣言する病院も増えてきました。「何かあれば組織が守ってくれる」という安心感があるだけで、現場の定着率は驚くほど変わります。

公立病院がしんどくなりやすい“構造”もある(個人の根性じゃ解決しない)

「なら他の病院に行けば?」と思うかもしれませんが、公立・公的病院には、構造的にしんどくなりやすい理由があります。総務省の「公立病院経営強化ガイドライン」などでも議論されていますが、これは個人の努力でどうにかなる問題ではありません。

赤字・人員・地域医療…全部背負う役回りになりがち

公立病院は「利益が出ないからやらない」ができません。へき地医療、救急、小児、周産期など、地域の「最後の砦」としての役割を担っています。病院の数自体が減少傾向にある中(厚労省の医療施設調査より)、限られた予算と人員で、地域全体の重い責任を背負わされているのが実態です。

「断れない仕事」が積み上がると、現場から順に崩れる

さらに「医師の働き方改革」が始まり、お医者さんの長時間労働が厳しく制限されるようになりました。それは良いことなのですが、お医者さんがやっていた仕事の一部が、看護師や他のスタッフにドンドン降りてきています。「断れない役割」と「降りてくる仕事」が現場でクラッシュしているのです。

それでも明日から少しラクにするために、“3つの逃げ道”

ここまで読んで「もうダメだ…」と思ってしまった方へ。医療崩壊の前に、あなたが崩れては元も子もありません。明日を少しだけやり過ごしやすくするための「逃げ道」を持っておきましょう。

①「辞めたい」をメモする(思考の渋滞をほどく)

頭の中だけで「辞めたい」と考えていると、漠然とした不安に押しつぶされます。スマホのメモ帳でいいので「何が一番嫌だったか」を書き出してみてください。「給料」なのか「あの先輩」なのか「夜勤の回数」なのか。敵の正体が言語化できるだけで、少しだけ呼吸がしやすくなります。

②味方を増やす:病棟内1人+病棟外1人のセット

職場の愚痴を言い合える人を、病棟内に1人(現状を分かってくれる人)と、病棟外に1人(医療業界以外の人だと、異常さに気づかせてくれるのでベスト)見つけておきましょう。孤立が一番危険です。

③転職じゃなくてもいい。「異動」「働き方変更」も立派な選択肢

「辞める=別の病院へ転職」だけがゴールではありません。夜勤免除の交渉をする、病棟から外来やクリニックへ異動願いを出すなど、今の環境のまま「働き方だけをスライドさせる」のも立派な自己防衛です。

もし今「辞めたい」が強い人へ(判断を急がないためのチェック)

最後に、今すぐ決断すべきか、少し立ち止まるべきかのチェックリストです。

睡眠・食事・涙腺:ここが壊れてたら“撤退優先”

「眠れない・起きられない」「食欲がない・食べすぎる」「理由もなく涙が出る・通勤中に泣いてしまう」。この3つのうちどれか1つでも当てはまったら、それは心が限界を超えているサインです。キャリアや職場の迷惑なんて後回しにして、まずは休む(休職や退職)ことを最優先にしてください。

「職場が変われば戻るしんどさ」なのか、「仕事そのもの」なのか

「看護師の仕事自体は好きだけど、この病棟のやり方が無理」なのか、「もう医療現場にいること自体がしんどい」なのか。ここを切り分けておかないと、転職しても同じ苦しみを繰り返してしまうことがあります。ゆっくり休んでから、この部分だけ見つめ直してみてください。

最後に:この数字を“脅し”じゃなく“サイン”として受け取ろう

辞めたいと言えるのは、責任感がある人

「辞めたい」と思う自分を責めないでください。それはあなたが不真面目だからではなく、真面目に患者さんと向き合い、現場の異常さに気づける「まともな感覚」を持っているからです。無責任な人は、悩みすら抱きません。

医療崩壊を止める前に、あなたが崩れないで

「公立病院の77%が離職を検討」。この数字は、世間に対する脅しではなく、現場からのSOSのサインです。この記事を読んで「私だけじゃなかったんだ」と少しでも心が軽くなってくれたら嬉しいです。あなた自身の心と体を守ることを、何よりも一番大切にしてくださいね。

今回の話題(一次・準一次ソース)

過去回・関連データ(自治労の同種調査)

看護職の離職率・需給(全国比較データ)

公立病院の制度・経営・統計

カスハラ・ハラスメント対策関連

参考:医師の働き方改革

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